基礎を知らなくともとりあえずゲームをつくることはできます。
しかし面白いゲームをつくろうと思ったら面白いゲームの仕組み、つまり「ゲームデザインの基礎」を知る必要があります。
例えばゲームでの「イベント」という言葉。
ゲームのイベント?
- ○○に出会って仲間に加えた。
- □□というボスキャラを倒した。
- △△山で炎の剣を取ってくる。
こういうのをイメージすることが多いと思いますが、実はどれも「シナリオイベント」と言ってイベントの中でもほんの一部分です。
シナリオイベントももちろん大事な要素ですが、面白いゲームをつくるためにはさらに知っておくべきことがあります。
今回は「前田圭士 著 ゲームデザイナーの仕事」を参考にゲームを構成している3つの要素を説明します。
●ゲームデザインの基礎
ゲームの基本を構成する要素が以下の3つです。
ゲームデザインの構成要素
- イベント(特別な出来事など)
- 勝敗条件(ルールなど)
- 快適性(操作性など)
つまり「快適に整った操作で、あるルールの条件を満たしたときに、特別なことが起きて喜んだり悲しんだりする。」まで出来てはじめて面白いゲームになるわけです。
1.イベント
まず冒頭で述べたシナリオイベントとイベントの違いを説明しておきます。
「イベント」とはゲーム中で起こる全ての出来事のことでその概念の下位に位置するのが「シナリオイベント」です。
RPGを例にすると以下の通りです。
イベントには楽しい、カタルシス、お得、トレードオフ・ジレンマというキーワードがあります。
一見当たり前の出来事も、これらのキーワードに近づけることで特別な出来事となります。
①楽しい
ただのアイテムの売買でも生意気な口をきく子供などのキャラにしてセリフで楽しませることができます。面白いと言う印象に残ることが大切です。
②カタルシス
「カタルシス」とは苦痛から一気に解放される気持ちよさといった位の意味です。ボス戦などで苦労した戦闘に勝利したときほど気持ちよさを感じるのが良い例です。
③お得
攻撃の回避やクリティカルヒット、モンスターのアイテムドロップ、普段より多い経験値などがこれにあたります。たまに起こるラッキーな出来事のことです。
④トレードオフとジレンマ
限られた選択肢の中でどれを優先するべきかプレイヤーに委ねます。試行錯誤して結果が訪れることがプレイヤーにとって特別な体験となります。
2.勝敗条件
多くの場合、何らかの勝利条件を満たすことがそのゲームの目的となります。
勝利の例
- 敵の体力をゼロにする。
- 点数をより多く獲得する。
敗北の例
- プレイヤーの体力がゼロになる。
- 敵の弾が命中する。
勝敗につながるものとして成否、生存、ゲーム目的、テーマ、ルールのキーワードがあります。
①成否
競争相手が存在しない場合に条件として用います。
成功の例
- 目的地に到着する。
- 女の子から告白を受ける。
失敗の例
- 時間切れ。
- ボタンを押すタイミングを外す。
ギャルゲーやパズルゲームなどで多く見られるものです。
②生存
ゲームオーバーにならず進行を続けること自体がプレイヤーにとっての目的の場合です。
生存が目的の例
- 延々と続くパズルゲーム。
- ループするシューティングゲーム。
中毒性の高いパズルゲームや、アーケードのシューティングゲームに多くみられます。
③ゲーム目的
ゲームの目的も大きな視点での勝敗条件といえます。
ゲーム目的の例
- RPGのラスボスを倒す。
- 推理モノの犯人を見つける。
- 全国統一をする。
これらに時間制限等を設けてメリハリと緊張感を持たせているパターンもあります。
④テーマ
そのゲームの何が楽しいのか、何がプレイヤーにとっての喜びなのかというものです。
テーマの例
- 仲間が増える喜び。
- 成長する喜び。
- 何かを育てる喜び。
人間の根源的な喜び、快感が扱われるもので、何か特別なものではなくありふれたことが多くなります。
⑤ルール
ここまでの勝敗、成否、生存、テーマを明文化することです。
ルールの例
- どうすれば勝ちなのか負けなのか?
- 成功と失敗の条件は何なのか?
- そのアイデアのどこが面白いのか?
思いついたアイデアを、勝敗等の条件なら仕様書、テーマなら企画書で破綻や矛盾のないよう文章にします。
3.快適性
ゲームにおける快適性には普遍的な法則や王道のようなものがなく、実際に触ってみないとわからないことがほとんどです。
どちらが快適か?
- 慣れれば快適になるが複雑な操作
- 簡単で覚えやすいが時間がかかる操作
プレイヤーや状況により快適性はケースバイケースです。
快適性にはユーザビリティ、インターフェイス、操作性、インタラクティブのキーワードがあります。
①ユーザビリティ
ユーザビリティとは使い勝手の良さのことです。
人はユーザビリティを強く意識していない場合、使い勝手が悪いと気づく事はあっても、使い勝手が良いと気づく事は稀です。
悪いユーザビリティの例
- アイテムなどの機能説明が抽象的。
- セーブポイントがわかりにくい。
何かゲームで使い勝手の悪いものを見つけたら、なぜ使い勝手が悪いのかを考える癖をつけると役立つはずです。
②インターフェイス
インターフェイスはゲームの入力、操作関係のことです。
→操作方法
わざわざ取説なんか読みたくないユーザーの方が大半を占めます。そのため直感的にわかるものが理想的な操作方法です。
ゲームの操作方法は極力お約束の分かりやすさを重視すべきで、オリジナリティーにとらわれないことが大事です。
自分のアイディアがそのお約束よりも優れているとわかっている時のみ無視することが許されます。
→コマンド
RPGなどで多用されるコマンドもプレイヤーにとっての快適性を大きく左右します。
・不必要なコマンド
選んでも何もないコマンドが存在する場合などは、そもそも開かせないようにします。
選択しても「現在アイテムを持っていません」などが表示されるようにすれば、プレイヤーにとっては便利なはずです。
選択表示を半透明にして選べないようにするのもアリです。
・新項目の追加
新しいコマンドや収集品が手に入ったのに気付きにくいこともあります。
コマンドの横にマークをつけるなどでとてもわかりやすくなります。
・配置の変更
ゲームをやりこむとコマンドの位置を自然と覚えるという経験はよくあるはずです。
そのためゲームの進行によってコマンドが増えた場合でもその配置は変えるべきではありません。
・その他の分かりにくいコマンド
よくあるわかりにくいコマンドの原因と解決策は主に以下の通りです。
コマンドの快適化
- 一度に多く表示しすぎている。
→漢字とカナを使い分け階層化する。
- 場所への配慮が足りない。
→階層化してでも分かりやすくする。
- 名前から機能が連想しにくい。
→意味が重複する言葉などを避ける。
これだけでかなり使いやすいコマンド表示になります。
③操作性
プレイヤーの操作に対するレスポンスのことで主に以下の2つが問題になります。
操作性のポイント
- 思った通りに動くこと。
- 思っていないようには動かないこと。
プレイヤーが「操作した通り」に動くことではないのが重要です。なぜでしょうか?
→当たり判定
良い例としてシューティングゲームではキャラクターの表示よりも当たり判定を小さくすることで攻撃を避けやすくできます。
その結果、プレイヤーが弾を避けようと思ってした操作が成功しやすくなります。
逆に敵の当たり判定を大きくすれば自分が撃った弾は相手に当たりやすくなります。
当たり判定と操作性
- 敵の当たり判定は大きく。
- プレイヤーの当たり判定は小さく。
- 微妙なときはプレイヤーに有利に。
- 当たるはずでもプレイヤーに有利に。
これぐらいの操作性にすることでプレイヤーは「自分がしようと思った操作」の再現に近づき、より大きな快感を得られるはずです。
④インタラクティブ
インタラクティブはお互いに影響しあうという意味で、プレイヤーの入力に対するゲーム側からの反応がある状態が繰り返されることです。
快適性に関するインタラクティブの一部が以下の通りです。
快適性のインタラクティブ
- メッセージによる情報伝達
- コマンド名による機能解説
どちらもゲームの進行をわかりやすく説明していることと言えます。
→簡潔かつ明快に
インタラクティブにおけるシステムメッセージやコマンド名はプレイヤーに繰り返し読んでもらうことが前提になります。そのため長くて分かりにくいものはご法度です。
それを踏まえて「より強い武器」のアイテム名の例が以下の通りです。
強さが分かりにくい例
- 武器A:妖刀村正
- 武器B:快刀正宗
強さが分かりやすい例
- 武器A:銅のつるぎ
- 武器B:はがねのつるぎ
アイテム名などは文字数が限られる中でその強さや効果をわかりやすく表現する必要があります。
●まとめ
ここまでのキーワードやゲームの構成要素はあくまでゲームデザインの基礎です。
この先実際にゲーム開発を進めるとその応用ももちろん必要になりますが、そこで身に付けるスタイルはあなた次第です。
しかし最初の一歩で基礎を固めてゲームづくりを始めれば応用のときにも必ず役に立ちます。
- 「イベント」と「勝利条件」は企画段階でしっかりと考えておきましょう。
- 「快適性」は開発途中での確認も忘れないようにしましょう。
ではでは、そんな感じで今回の記事でした。
あなたが面白いゲームを開発してくれることを願っています!
がんばってー!
参考 ゲームデザイナーの仕事 前田圭士 著