ゲームの企画アイデア発想法を「俺屍」制作者から学ぶ!

「ボクもひ孫の顔を見て泣いてみたい。その感動を再現してみたい。」

長男が誕生した際に、自分よりも両親がメソメソと泣き、祖母に至っては号泣していた。

この体験こそゲームデザイナー舛田省治氏がPSソフトの名作「俺の屍を越えてゆけ」の発想に至った経緯だそうです。

そもそも舛田ゲーの発想の仕方には特徴があります。

舛田ゲーの発想

  • 「個人的な欲求」
  • 隠された「他人の欲求」
  • 「未知の快感」
  • 「独自性」ある二匹目のドジョウ

てわけで今回は舛田氏の実際のゲームを例に説明していきます。

もーね、これさえ分かればあなたにも良いゲームのアイデアがバンバン浮かびまくりですとも!

あ、因みに本を読んでわかりましたが、舛田省治氏かなりの女好きです。

ていうかコレ、ただの下ネタ好きなオッサンじゃねえか!←すみません

笑いながら文章を読み、そこも含めて相当おもしろい方だと思いました。笑

1.ゲーム企画のアイデアにおける「発想」

そもそも、舛田ゲーにおける「発想」とは何なのか?

著書ではこう述べておられます。

発想とは

「既存の情報Aに何らかの加工をほどこし、新しい価値がある情報Bを生みだすこと」

でもでもその既存情報Aをどう見つけるのか?

カンタンに見つけられたら苦労しねえよ!

ええ、ええ、そうですよね。でも大丈夫です。

見つけ方のヒントがまさに前述の舛田ゲーの特徴なんですね。

日常生活でこれらを意識したり感じたりしたときに心に留めておく。

だからちょいと時間がかかるのもあるんですが、斬新なゲーム企画を考えるのにピッタリな方法です。

具体例あげていきましょう。

2.自分がしたいことをゲーム企画のアイデアに

当記事冒頭、俺屍の企画経緯の話です。

「ボクもひ孫の顔を見て泣いてみたい。その感動を再現してみたい。」

でも普通ひ孫ができる感動の仕組みなんて分からんでしょ。

ていうか普通は生まれた子の両親の方が感動は大きいはずなんじゃないか?と思うはずです。

そう、これって本来若者では理解できない、ひいおばあちゃんまでいかないと実感できないことなんです。

・俺屍で叶えた「個人的な欲求」

でも舛田氏はこのことをしつこく(笑)考え続け次の結論に至った。

「平凡な人生を送ってきた普通の人にとって、孫やひ孫とは自分が生きて遠くまで歩いてきたと確認できる里程標であり、自分の人生に意味があったと実感できる目に見える証。

だから僕より両親、両親よりも祖母の方が感激がひとしお・・・なのではないか?」

そして自分にもその感動が味わえるか?と考えたときに、晩婚化の現在ではとても無理だと思った。

でもあきらめない。

「ウソでもいいから祖母の感動をシミュレーションし、僕もあんなふうに泣いてみたい。何か手はないものか?」

これがまさに「個人的な欲求」です。

そこで舛田氏はふと思いついた。

「そうだ、ゲームの中なら時間軸を縮めて世代の移り変わりをいくらでも眺めることができる。」

ここが俺屍のスタートだそうで。

そしてゲームは大ヒットし「個人的な欲求」は多くの人を感動させたと。

これポイントですね。

※俺の屍を越えてゆけ

PSのRPG(?)。

鬼的なボスに短命・種絶の呪いをかけられた主人公一族が神との間に子をなし、鬼的なボス(たち)を討伐していくゲーム。

今でもコアなファンが多い。舛田ゲー。

3.ゲーム企画になるようアイデアを変換

ここちょっとね、ハードすぎて人によっては抵抗あるかもです^^;

リンダキューブの企画経緯の話。

「強姦」ってありますよね。もちろん恐ろしい犯罪です(;^ω^)

しかしあるときレンタルビデオのアダルトエリアでもそのコーナーはいつもレンタル中が多いことに気付いたそうです。

「アダルトゲームではなく一般向けの家庭用ゲームに”強姦”の興奮、快感、醍醐味を持ち込めないものか?」

ヒエッ・・・。ぶっ飛んでます。発想が。

・リンダキューブに込めたタブーとも言える「他人の欲求」

いや、真剣ですよ?舛田氏は。

潜在的に需要があるのではないかと舛田氏は思ったが、しかしいやいや強姦のゲームはまずい。

どうやっても倫理的に問題があるし。

だからいくら考えてもそのときは良いアイデアは出ず。

そして一年くらいして何かの学術書である説を見つけてしまった。

―強姦とは狩猟の代替行為である。

見つけちゃったかー。笑

正直眉唾ではあったがその説を方便に(笑)狩猟がテーマのゲーム「リンダキューブ」を企画にしてしまいます。

その結果ゲームはヒットしたと。

まあいろいろと問題が出ちゃうかもな話ですが、ハードかつニッチな欲求をいくらかマイルドに変換して成功した例です。

※リンダキューブ

PCエンジンCD‐ROM2のRPG(?)。

滅亡する惑星で動物たちを捕獲してできるだけ多くの種を存続させるゲーム。

今でもコアなファンが多い。舛田ゲー。

4.父の死さえもゲーム企画のアイデアに

突然ですが昔の偉い人が言ったラテン語の有名な言葉でこんなのがあります。

メメントモリ(死を想え)

まさにこれをゲームにしてるのが「勇者死す」です。

・死を意識して生まれる「勇者死す」の「未知の快感」

経緯は舛田氏のお父さんが肝細胞癌切除の手術をしたことに端を発します。

これを境にお父さんは性格が温和になり、財産の整理などを始めたそうで。

そのとき舛田氏はお父さんの気持ちを理解しようと考え、自分がその立場ならどうするだろうと想像したとか。

「自分が余命一年と宣告されたら自分は何をするか?」

「死ぬときは妻や子供にどんな言葉を残そうか?」

「今やり残していることはないか?」

こういったことを考えるようになりそれぞれをこなしていったと。

そしたらそのときに何を感じたか?

それがゲームのヒントになります。

  • 散らかった部屋を片付けて、あるべきものをあるべきところに置き、不用品を思い切りよく捨てるような爽快感。
  • 父の死といつかは自分にも訪れる死を受け入れるべく心の準備運動をしているような、上手くは言えないが安らぎと興奮がない交ぜになったような感覚。
  • 今まで何とも思わなかった日常生活がいとおしくおもえた。

これらをまとめて一つの結論に至ります。

「今までにない快感。」

これはゲームの企画に使える、と思ったそうで。

しかし、この企画は採用されるまでに十年かかったとか。

まあそういうこともあると。笑

※勇者死す

携帯アプリで配信されたRPG(?)。

魔王と相打ちした勇者が神に与えられた5日間で平和になったはずの世界を回るゲーム。

日を追うごとに勇者が弱くなっていく。

舛田ゲー。

5.後発のゲーム企画をアイデアで差別化

他人のつくったゲームがおもしろかったから、自分のアイデアを加えて差別化しつつ似たやつをつくるってパターンですね。

しかし言うは易く行うは難し。

その差別化の仕方を教えろください。と。

とりあえず「ときめきメモリアル」ってゲームがあって昔流行ったんです。

もーね、カウントダウンTVで藤崎詩織嬢の歌が21位に入って全国に流されたりしたんですよ。

でも今と違って風当たり強いですからね、当時のそういうアレは。

見たときは堅気の方には申し訳なく、気恥ずかしく、何とも言えない気持ちになりました。

まーボクは如月さん派なんですけどね。┐(´∀`)┌

んなこたどうでもいいんですが、舛田省治氏は片桐さん派だったと。

そしてこう関心したそうです。

「恋愛SLGというのは凄まじい破壊力だ」

笑えます。

・「独自性」を持たせた二匹目のドジョウ、ネクストキング

でもプロですからね。同業者として考えたと。

「自分ならこの材料をどう料理するか?先行商品とどう差別化するか?」

流石です。

しかも舛田氏はタイムリーにそのヒントを得ます!

「実は舛田君のこと、ちょっと好きだったんだ!」

そう、もちろん同窓会で出会った人妻からです。

これには舛田省治氏、鼻の下を伸ばしたはず。←失礼

しかし続く別の同級生の言葉です。

「ないない。だってあのとき、あんた○○くんと付き合ってたでしょうが。あんた好きな人、何人いたのよ。ゲラゲラ。」

上げて落とす。(´;ω;`)

でもこれがネクストキングのアイデアになるわけですよ。

  • 自分と同じような男性がゲームの中に複数存在する。
  • 女性にはすでに恋人がいる場合もある。
  • 複数の男性を好きになるのも、心変わりするのも当たり前。

またぶっ飛んでます。笑

実際のゲームはリンダキューブ同様に、この要素をオブラートに隠したものとなってますが。

ぶっ飛んでますからね、独自性はすごい^^;

※ネクストキング

PSのSLG。

王様候補選挙のために女性有権者にモテるようがんばるゲーム。

声優がすごい。

舛田ゲー・・・と本で読んで知った。笑

4.アイデアを選別してゲーム企画にする

なんとなくのアイデアはいくつか見つかったけど、ゲームとして面白いか、共感が得られるか分からない。

そんなときの舛田流の選び方。

①思いついたネタのもっとも推したい点を短いフレーズにする。

趣旨説明、広告の見出し、ユーザー間の伝聞ではその程度の長さになるためです。

短いフレーズの例

俺屍

「自分の子孫の行く末を眺めてみたくないか?」

リンダ

「世界中の動物を狩って集めるんだよ、面白そうだろ?」

短くまとめられない場合はその時点で欠陥がある。

一言でまとめられないのであれば、情報量が多すぎて直感的に伝わらない。

②フレーズをチェックポイントでふるいにかける。

チェックポイントは以下3つ。

1.自分でみておもしろそうか?

自分がおもしろいと思ってない企画が人に興味を持ってもらえるわけがない。

2.五人に聞いてみてどう答えるか?

五人のうち、二人か三人が「メチャクチャおもしろそう」と答えるのが理想。

五人全員が「おもしろそう」の場合は平凡、全員が「別に・・・」の場合も見込みなし。

五人の「そこそこおもしろそう」より、三人の「メチャクチャおもしろそう」の方がずっと可能性がある。

また、五人は同好の士であってはいけない。その場合におもしろがるのは当たり前。

3.どんなことが起こるかをいくつ想像できるか?

企画のプロなら30~100。

普通の人なら3~5。

上記の数程度の具体的なエピソードが出てくるようなら見込みがある。

 

※注意点

「メチャクチャおもしろそう」と答えたにもかかわらず、具体的なエピソードが一つか二つしか出ない場合、「○○が××したら楽しいと思わないか?」のポイントがずれている。

普通の人から10以上のエピソードが出た場合、その人が何らかのエンタメで体験している可能性が高いため差別化にならない。

もしくはネタが広がりすぎなので、後々風呂敷をたたむのが大変になる。

条件や状況を限定した方が無難、とりあえず捨てずにキープのネタに。

普通の人から出たエピソードのアイデアはゲーム内に組み込むべき。

あなたが発した「○○が××したら楽しいと思わないか?」という問いかけに対する素直な期待(ニーズ)であるため、裏切ってはならない。

5.ゲームの「本質」がアイデアを企画にする

アイデアの発想、ネタの選別の仕方がわかったところで問題になるのが、それをどうゲームにしていくかってとこですね。

ここでも舛田流の定義出ます。

ゲームデザインとは

「趣の異なる前向きなジレンマが適度なストレスをともなって、適当な頻度で繰り返しプレイヤーに提示され、その意思決定の結果によって状況が変わりえる構造を有する事象」

ここまでの説明で得たアイデアをこれに当てはめることで、舛田流で言う「ゲーム」となるわけっすね。

しかしこれも言うは易く行うは難し。

まあこれ以上は「ゲーム企画のアイデア発想法」からは脱線しちゃうんで、今回はここまでということで。

続きは別の機会に。笑

そんな感じで今回の記事でした。

ではでは、あなたがめっちゃおもしろいゲームをつくってくれることを願っています!

がんばってー!

参考

ゲームデザイン脳 舛田省治の発想とワザ 舛田省治 技術評論社