レベルデザインの基礎で覚えるべき3つの仕掛け
レベルデザインとはゲーム開発の中でステージにあたる部分のデザインのことです。
ゲーム内の仕掛けをどこに置くか考える作業で、料理で言う「味付け」の工程に当たります。
レベルデザイン次第でプレイの手ごたえや難易度が大きく左右されるため、企画自体のユーザー層なども見極めて考えなければいけません。
ここではそんなレベルデザインの基本となる考え方を解説します。
●レベルデザインの基礎
レベルデザインの基本はプレイヤーに行動させるための仕掛けを用意することです。
レベルデザインのしかけ
- 障害・技能
- 誘導
- リプレイ価値
これらをうまく使ってプレイヤーの行動を誘導、または制限していきます。
1.障害・技能
障害はプレイヤーに与えられる課題で、技能はプレイヤーがゲームを操作するために与えられる能力のことです。
プレイヤーは技能を活用して障害に対処することになります。
①障害
障害には以下の4つがあります。
ステージの障害
- ロードブロック
- 敵
- 罠
- パズル
それぞれを適切に配置することでプレイヤーへ課題を与えることができます。
・ロードブロック
ロードブロックは小さな障害のことです。プレイヤーの行く手を完全に防ぐのではなくプレイ時間を少しだけ長くします。
ロードブロックの例
- ジャンプで超えられる段差
- ボタンを押すだけで開く扉
ワンアクションで簡単にクリアできるような障害は、単調なプレイに変化をもたらします。
また難易度の高いステージなどでは安堵をもたらす要素にもなります。
・敵
敵はプレイヤーに危害を加える存在です。
敵はランクと数を基準に配置します。
敵の基準
- ランク→単純な強さや行動パターン
- 数→ステージでの多さや出現頻度
敵のランクや数を変化(ボスキャラや敵拠点など)させることでプレイヤーへ新しい課題を与えます。
・罠
罠はステージの地形そのものがプレイヤーに危害を加えるもので、動く罠と動かない罠があります。
罠の例
- 穴(落とし穴)
- マグマ
- 吊り天井
フェアなゲーム性にしたいのであれば何らかの警告を出しておくことで、いわゆる「初見殺し」を避けられます。
・パズル
パズルは頭を使って解くタイプの障害です。
パズルの例
- カギを見つけて扉まで移動する
- 3つのスイッチを正しい順番で押す
ゼルダシリーズなどで多用されていますが、パズルを解くために複数の工程があればステージを広く探索することも課題になります。
②技能
技能には次の3つが挙げられます。
キャラの技能
- 基本技能
- 追加技能
- 技能の組み合わせ
プレイヤーはこれらの技能を駆使して障害をクリアします。
・基本技能
ゲームの開始時から使用できる技能のことです。
各ゲームにより異なるため、昨今ではいわゆる「チュートリアル」でこの基本技能の使い方を教えます。
基本技能の例
- ジャンプ
- パンチ
- ダッシュ
アクションゲームでもジャンプができなかったり、開始時から空が飛べるものなど様々です。
そのゲームの自由度やプレイヤーへの制限などに影響します。
・追加技能
武器、アイテム、魔法などでキャラクターに新しい技能を習得させプレイに大きく変化をもたらします。
新しい技能はそれを効率よく習得できるようレベルデザインを行います。
技能習得の例
●目的地への道を岩でふさぐ
→「岩を壊すハンマー」を近くの洞窟に置く
習得に必然性を持たせ、自然かつ効率的に配置するのが理想です。
・技能の組み合わせ
技能の組み合わせが必要な障害を用意すると難易度が上昇します。
組み合わせが必要な障害
- 遠くの高台の敵→ジャンプ+ショット
- 幅の広い穴→ダッシュ+ジャンプ
障害のクリアに必要な技能は難易度が高いほどより達成感を得られます。
そのため技能を使いこなすための課題やチュートリアルを段階的に用意することが大切です。
2.誘導
誘導はプレイヤーの行動を意図的に操作することです。
以下3つの誘導方法があります。
誘導方法
①アイテム
②障害
③ヒント
これらを使ってプレイヤーを次の課題や目的地まで誘導します。
①アイテム
まず言っておかなくてはいけないこととして、「アイテムがある→取りに行く」という条件反射はいわゆるゲーム脳です。
注意しましょう。笑
・動機付け
本来、アイテムにはそれを取ることへの動機付けが必要です。
アイテムの動機付けの例
- 強敵の後の回復アイテム
- 高価な武器の周辺にあるお金
通らなくては行けない位置にアイテムを置くことで自然に取らせて、有益なものであると覚えさせる方法もあります。
・誘引
動機付けがされていればプレイヤーは自然とアイテムが置いてある方向へ進むようになります。
これを誘引と言いますが、動機付けがされていても誘引されにくい場合があります。
誘引されにくい例
- 体力が最大のときの回復アイテム
- お金がたくさんある場合のお金
なるべく誘引しやすい場面にアイテムを配置することでプレイヤーの誘導も成功しやすくなります。
②障害と誘導
アイテムとは逆に障害があるルートはプレイヤーは避けたがります。
序盤に進ませたくないルートには、後半で覚える技能が必要な障害を用意するとうまく誘導できます。
③ヒント
ヒントには次のようなものがあります。
ヒントの例
- 立て札
- メッセージポップアップ
- 会話イベント
ヒントでは、単純な攻略方法などもプレイヤーに伝えてあげることができます。
3.リプレイ価値
プレイヤーがクリア済のステージでも再びプレイしたくなるかどうかを示すものです。
リプレイしたくなる要因
①スコア
②隠し要素
③キャラ特性
ステージのクリアという目的以外にプレイする価値をプレイヤーに与えます。
①スコア
スコアはプレイを評価する指標です。
ステージクリア時にプレイ内容の評価を与え、同じステージでもより高いスコアを目指すようリプレイを促します。
②隠し要素
クリアに直接の必要はないが何かありそうだと匂わせる物や場所を配置し、プレイヤーに気づかせリプレイを促します。
③追加技能とキャラ特性
隠し要素ともつながる部分ですが、ある時点ではどう工夫しても行けない場所を用意します。
あとあとでの追加技能や、違う特性を持った使用キャラクターを登場させることでリプレイを促します。
4.理想的なレベルデザイン
ゲームデザイナーによって理想的なレベルデザインは異なると思いますが、一例として「GFF GAME FACTORY’S FRIENDSHIP」さんのインタビュー記事をもとに現職ディレクターの方のお考えを紹介します。
●レベルデザインで気を付けていることはなんですか?
ゲームをプレイする方では当然の認識ではありますが、ゲーム開始直後に突然複雑な操作やルールが押し付けられてしまうようなことは避けなければいけません。 どんなに複雑なゲームであっても開始後には説明があってほぼ一本道上で段階的に基本的な遊び方が理解できるようにすることを目指しています。 バランス面の調整はなかなか理想が見えない難しい工程ではありますが、ユーザーさんがゲームで詰んでしまうような状況を避けることを特に気をつけています。キャラクター成長式のゲームでも、各面でのキャラクターのレベルだけを意識するのではなく、ユーザーさんのゲームの理解度がどこまで成長しているのかという点も推測しながらバランスの高低を調整することを理想としています。
GFF GAME FACTORY’S FRIENDSHIP「レベルデザインのお仕事:前田 雄市さん(システムソフト・アルファー株式会社)」
ユーザーの成長に合わせて段階的な難易度調整を行い、「詰んでしまう」ということのないバランスが大切なんですね。
●まとめ
レベルデザインの基礎には2dgamers.jpさんの「レベルデザイン概論」で記載されている、
「ゲームをプレイするのは自分ではないということ」
「レベルをプレイした人の意見を素直に受け入れること」
この二つが根底にあると思います。
当たり前と思うようなことかも知れませんが、これを忘れれば作り手のエゴしか残らないゲームになってしまいます。(エゴも重要ですが)
この記事で紹介したゲームデザインの基礎をしっかりと押さえ、プレイヤーがおもしろいと思えるトコロまであなたの手で導いてあげましょう!
ではでは、そんなところで今回の記事でした。
あなたが面白いゲームを作ってくれることを願っています!
がんばってー!
参考
- 2dgamers.jp「レベルデザイン概論」
- GFF GAME FACTORY’S FRIENDSHIP「レベルデザインのお仕事:前田 雄市さん(システムソフト・アルファー株式会社)」